第5話 溜池の主

イガナ村 村長の家



村長「主というのは、巨大な海老です。両手の大きなハサミを振り回し……」


システィナ 「海老と言うよりそれは、ザリガニですね」


ネクラーズ一行は怪物退治のためにイガナ村に来ていた。
村長が言うには、怪物は「溜池の主」と呼ばれ、普段は害をなさないが、10年に一度村を荒らすそうだ。


村長
「…………」


オクト 「(細かいことはいいんだよ! 村長黙っちゃったじゃないか)」

システィナ
「(いえ。海老とザリガニではそもそも……)」


ヒューイ 「(聞こえないふり)村人の皆さんに、溜池には近づかないよう伝えてもらえますか?」

村長
「それはもちろんです。休憩の際はこの家の一角をお使い下さい」

イガナ村 広場



一行は村長の家から出て、街の広場にやってきた。
村長の家の中に部屋を借りたが、聞かれたくないこともあるからだ。


ヒューイ
「なかなか良さそうな依頼人じゃないか」


ルーシー 「報酬も上げてくれましたしね」


ケネス 「……そういう基準なの?」

オクト
「まあとにかく、少しでも情報を集めておこう」


村は退屈ながらものどかで暮らしやすそうだ。
溜池は大きなものだが魚が住んでいないらしい。



オクト 「俺は退屈なのはちょっとな」


ケネス 「いやあ、のどかで良さそうな村じゃないか」

オクト
「ケネス、ひょっとして冒険者が合ってないんじゃないのか?」


ベルク 「(無視)……魚が住まないということは、かなりの大物だと思った方がいいな」

ヒューイ
「実際村人に目撃されてるし、間違いないだろう」

ルーシー
「(聞き込みを終えて帰ってきた)村はずれに道具屋があるそうですよ」

ヒューイ
「それは助かるな。恥ずかしながら準備が整っていない」

イガナ村 道具屋



店主「いらっしゃいませ〜」

オクト
「へぇ……。田舎にしちゃ品揃えがいいんな」

店主
「へへ。ありがとうございます。でも、イナガは田舎だからあまりこういうお店は需要が無いんですよね。
 ……というわけで、今日は色々と買っていってくださいね」

ヒューイ
「商売上手なことで。ご期待に添えれりゃいいけど」


ルーシー 「溜池の主退治に行くんですけど、何か使えるものがあったら……」


オクト 「おわー! これ『ペインフリス』じゃねえか! こんなもんも置いてんの?」

店主
「『ペインフリシュ』はイガナが原産のお酒ですから。お一つどうですか?」

オクト
「へー。そうだったんだ。産地とかは気にしないからなあ」

ルーシー
「……仕事の役に立つものを買ってください」


オクト 「お前そうは言うけどさあ、これは美味いぞお。
 リューンならこんな値段じゃ買えないぜ?」

ヒューイ
「まったく……こいつに会計任せたのは失敗だったな」

オクト
「買う。これは決定事項だ」

ヒューイ
「やれやれ……。ほっといて必要な道具を選ぶぞ」



ケネス 「相手は大きなザリガニだよね。『釣竿』で釣ってみるのはどうかな?」


システィナ 「いや、この『黒き鉄鎚』で川の中にある岩をぶったたいたら、ぷか〜って……」

ヒューイ
「そんな、魚じゃあるまいし……」


ベルク 「しかし、装甲が厚そうだから打撃武器は効果的だろう」

ヒューイ
「んじゃあ『黒き鉄槌』を買っとくか」

オクト
「それと、『ペインフリス』ね」


店主「合計で2500spです。ありがとうございましたー!」

イガナ村 溜池


システィナ
「へえ。怪物が住んでるって聞いたからおどろおどろしいのかと思ったら、
 結構綺麗にしてるんですね。」

ケネス
「ホントだね。北には東屋なんかもあるよ」

ヒューイ
「いつもは村人達のちょっとした憩いの場なんだろうな」


ベルク 「北に東屋……」

ヒューイ
「ええい、うるさいうるさい。さっさと行くぞ」


一行は直接溜池に入れるように、南回りで進んだ。



ケネス 「うわあ、足元ドロドロだよ」

システィナ
「足場を考えないと動きが取りにくいですね」

オクト
「……釣り竿が落ちてた。これはまだ使えるな」

ケネス
「やっぱり釣り上げようよ」

ヒューイ
「おいおい。(ちょっと考えて) ……いや、やってみろよ」

ケネス
「やったね。まあ見ててよ」


ケネスは釣り糸を垂れた。


ケネス
「かかった! 引き上げるよ!」


ザパーン



ケネス 「…………」


ヒューイ 「主の名は伊達じゃないな」

オクト
「来るぞ! 油断するなよ」


<第1ラウンド>
ケネスは『黒き鉄槌』で装甲を打ち破りに掛かる。ベルクは会心、その他は防御。



ケネス 「うおおおお!」


オクト 「よし! これでやりやすく……!?」


主は両手のハサミを振りあげ、パーティに向かって突っ込んできた。


ヒューイ
「くそっ! モンスターって奴には常識が通用しないな!」


システィナ 「回復急いでください!」


<第2ラウンド>
全員で攻撃。システィナは『眠りの雲』


オクト
「げ、まさか……!」


主は再びハサミを振り回し、群がってきた全員をなぎ払う。



ヒューイ 「なんなんだちくしょーっ!」


<第3ラウンド>
ルーシーは先ほどの攻撃で戦闘不能。
ケネスは再び『黒き鉄槌』ベルクは『居合い抜き』。その他のメンバーはそれぞれ攻撃。


ベルク 「むんっ……!」

オクト
「よし! 効いてるぞ! 頑張れおやっさん」

<第8ラウンド>


システィナ 「私が行きます! これでとどめ!」


主は巨大な音を立て、倒れた。

帰り道――



ケネス 「へへへ……。小さな村だけど、あそこでは僕たち英雄なんだよね」


オクト 「まあな。いやあ、いい依頼だった」


ルーシー 「オクトさんが良かったのは村長さんにもう一本お酒を頂いたからでしょう?」

オクト
「これは本当にうまいんだからな。ルーシーにも飲ませてやるから」

ルーシー
「私は遠慮しておきます……」

 Mission Complete ! 

報酬
+1000(報酬)
−1000 『ペインフリス』購入代
−1500 『黒き鉄槌』購入代

現在所持金 2200SP

作者後記
短いシナリオの中でもMoonlit様独自の色を存分に出した見事なシナリオです。たぶんこれ作者名を隠して遊んでも誰が作ったか分かります。優しく柔らかい雰囲気がお気に入りです。
まだまだ駆け出しながらもいい感じの冒険を繰り返すネクラーズ一行。これこれ、これが欲しかった。やっとシスティナ、ベルク辺りもしゃべり出しまして。これからどう転ぶのかというところです。

著作権表記
シナリオ 「溜池の主」(Moonlit様)
村長、店主(奏文様)

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