第4話 峡谷の洞窟

冒険者の宿



ケネス 「賢者の塔の依頼ねえ……」


オクト 「ロクな依頼がないからな、あそこは。 ……おっと」


システィナ 「あ、私は関係者じゃないから大丈夫ですよ」

オクト
「そうなのか?」

システィナ
「私の魔法は軍隊仕込みです。師匠は母ですけど」


ヒューイ 「……それにしても、『得体のしれない魔物』か。他に情報はないのかね?」


ルーシー 「賢者の塔が意図的に隠してたりするんなら、嫌な感じはしますけどね」

オクト
「何かを隠したがってるのは明らかだよ。賢者の塔から退治依頼なんて普通来ないからな」

ケネス
「キメラが逃げ出した尻ぬぐいなんて嫌だからね」

システィナ
「この報酬ですから、そんなに重大な事件でもないと思いますけど」


ベルク 「どちらにしろ、これだけ情報が少ないと、向こうに着いてから自分達で調べるしかないだろう」

ヒューイ
「あーもう! 考えるの止め止め! 行くだけ行ってみよう。どうせ成功報酬だし」


ライラ村



一行は、『得体の知れない魔物』が出没するというライラ村に到着した。
早速聞き込みを開始するが――


村人
「また、冒険者か。リューンの冒険者ときたらろくなのがいない」

村人
「冒険者ならもうお断りよ」

オクト
「……ずいぶん嫌われたもんだな」

ヒューイ
「信用を無くした冒険者なんてこんなもんだ」

ケネス
「賢者の塔の尻ぬぐいに、冒険者の汚名返上か。……荷が重いなあ

ルーシー
「まともに話が出来そうなのは村長くらいですか。
 だいたい今まで冒険者が失敗続きっていうのも初耳ですよ」

ヒューイ
「まあ、そうぼやくな。とにかく今は情報が足りない。聞きに行くしかないだろ」


一行は、詳しい話を聞くために村長の家に向かった。



村長「……というわけで、不思議なことに、その魔物の姿を見たものがおらんのじゃ」

ケネス
「なるほど。……ところで、依頼の報酬が賢者の塔から出ているのはなぜですか?」

村長
「それが、最初に村が荒らされた数日後に賢者の塔から使者が来て、
 『その魔物が持っている全ての所有品と引き換えに金貨を渡す』と言ってきたんじゃ
 わしらも退治の依頼を出そうと思っておったが、どうしてもお金が工面できなくてのう」

オクト
「(渡りに船だった、ってことか)」

ベルク
「ありがとうございました。一応、当たってみます」


村人から鍵を借り、荒らされたという倉庫に入る。


オクト
「おーおー、荒らされてること」

ヒューイ
「しっかし、鍵を掛けた倉庫に、姿を見られずに忍び込むことって出来るのかねえ」

ケネス
「壁をすり抜けたのかもよ」

オクト
「ゴーストだってのか? アンデッドはもう勘弁して欲しいな」

システィナ
「…………」

ルーシー
「ゴーストは穀物をかじりませんよ。それにほら、あごの跡があります」

ヒューイ
「このサイズからすると、あまり大きな生き物ではなさそうだな」

ケネス
「それは何よりだね」


システィナ 「……あの、ちょっといいですか?」


ヒューイ「はい、発言を許します」


システィナ「えーとですねえ、村人の誰も姿を見てないってのはやっぱり変だと思うんですよね。
 さらに、鍵の掛かった倉庫にも侵入できている……」

オクト
「……つまり?」

システィナ
「その生き物は透明で、壁くらいなら通り抜けられる生き物ってことではないでしょうか?」

ヒューイ
「そんな生き物聞いたことがないぞ」

ベルク
「いや、しかし……」

ルーシー
「賢者の塔の要求は魔物退治ではなく『魔物の所有品』でした。
 そうなると……」

一同
「マジックアイテムだ!」


ヒューイ 「なるほど。賢者の塔は何らかの理由で『姿を消せるアイテム』を紛失したか、もしくは奪われた――」


オクト 「そこに、ライラ村の奇妙な噂が入ってきたんだな」

ケネス
「あやふやな依頼で冒険者を送り込んだのも、何とか表沙汰にならないうちに回収したかったからか」

ベルク
「姿を消せる相手となると、厄介だな」

ヒューイ
「大事になる前に片付けるか。ねぐらは西の渓谷だったな、急ごう」


西の渓谷


ヒューイ
「洞窟……いや、鉱山か?」

オクト
「とにかく、この奥に正体不明の生き物がいるんだ。気をつけて行くぞ」


一行は、慎重に洞窟の最奥まで進んだ。そこにいたものは――



グレムリン「…………」

ケネス
「……グレムリンか」

オクト
「飛べる、魔法を使う、さらに消えるとなると……確かに厄介だな」

システィナ
「どうします? 一気にやっちゃいましょうか」

ヒューイ
「いや、相手は消えられるし、洞窟から逃げられたら取り返しが付かない。慎重に行くべきだ」

ベルク
「マジックアイテムが何かも分かってない。無闇には動けなんな」

ヒューイ
「あのグレムリンだって、ねぐらを手放したくないだろう。あまり派手にやらなければ……」

ルーシー
「命の危険を感じさせない程度に攻撃、ですね。マジックアイテムの確保を最優先して」


オクト 「よし、じゃあ俺が忍び寄って攻撃してみる」


……………………


グレムリン
「ぎゃっ!?」


グレムリンは慌てて指輪をはめて逃げ出した。


ベルク
「!! 指輪! あれがマジックアイテムだ!」

オクト
「追うぞ!」

ヒューイ
「慎重にな! 追い詰めすぎるなよ」


……………………



システィナ 「私が眠らせてみます。これなら逃げられないはず!」

グレムリン
「……ふにゃ……(ぼて)……キキィ!」

ヒューイ
「飛んでるグレムリンが、眠って、床に落ちて、目を覚まして、逃げたな」

システィナ
「ああああ〜〜! こんな単純なことに気付かなかったなんて!」


……………………



ベルク 「よし、行き止まりだ! これでは逃げられないだろう」

ルーシー
「わわわ、消えられた! これじゃ追い詰めても無駄ですよ!」



……………………



ヒューイ 「よし、ここなら弓が使える! っておい! 消えるなよ!」


……………………



ケネス 「はあっ……はあっ……完全に……おちょくられてる……」


ルーシー 「はあっ……いえ……なめられるのは……はあっ……作戦の内ですから……」

ヒューイ
「……くそっ……消えるのは反則だ……どうやっても逃げられちまう」


オクト 「俺に考えがある……」

ベルク
「…………」

システィナ
「な、なんでも聞かせてくださあい……」

オクト
「……あいつが指輪を出すときは決まって逃げる直前だ。
 それに、一旦は止まってこっちの反応をうかがってくる」

ルーシー
「おちょくられてますからね」

オクト
「みんなはあいつの気をそらしてくれ。
 俺が後ろから忍び寄って、あいつが逃げる瞬間に指輪をたたき落とす」

ヒューイ
「……強引だが、一番効果がありそうだな」

ケネス
「よし、やろう!」


渓谷の洞窟 出入り口付近



ルーシー
「これであなたの顔も見納めですね。いきますよ!」

グレムリン
「キ、キキィ!」


<第1ラウンド>
ケネス、ベルクはフェイント。そのほかのメンバーは防御行動


<第2ラウンド>
ベルクがフェイント、ルーシーは攻撃。オクトはまた攻撃できず。


ヒューイ
「まだかよっ……」


<第3ラウンド>
ついにオクトに『攻撃』が配布! オクトはグレムリンに攻撃。



オクト 「今だ!」




透明の指輪を手に入れた。


オクト
「これが透明になれる指輪か。『何も持っていませんでした』と報告して……ふふふ」

ルーシー
「やめてくださいよっ!」

 Mission Complete ! 

報酬
+800(報酬)

現在所持金 3700SP

作者後記
雰囲気のあるシナリオが続いたので、とにかく楽しいシナリオを、と選ばせていただきました。とにっかく楽しかったです。なんか、2レベルになってやっと駆け出しのドタバタ感を味わえた気がします。牧歌的な雰囲気と、賢者の塔に対するウンザリ感も良かったです。
ブツブツ文句言いながら仕事を進める感じはネクラーズですね(笑) パーティ内で相談するときも、酒場でしぶーく、よりも倉庫でウンコ座りでの方が目に浮かびますし。これが彼らの日常なのでしょう。

著作権表記
シナリオ 「峡谷の洞窟」(ロムシフ様)
素材 村長(グリマス様) グレムリン(groupASK様)
スクリーンショット 背景(らたら様) グレムリン(groupASK様)

←第3話 | ホーム | 第5話→