第1話  道化の館

道化の館


とある仕事の帰り道、ネクラーズ一行は突然の通り雨に襲われた。
一行は雨宿りのため、近くにあった館に向かう。そこで待っていたものは……


(ギィィィィ)


道化「これはこれは、何と感慨。お客人がやって来られるなんて 久方ぶりではないですか」


ヒューイ「……っ(何だこいつは) すまない。雨宿りをしたいんだが、軒先だけでも……」


道化の格好をした人物であった。右手には男の子の、左手には羊のぬいぐるみを付けている。
道化は、次の言葉を発しようとするヒューイを制するように続けた。


道化
「それはいけませんね。どうぞどうぞ中へお入り下さい」

ヒューイ
「いや、気持ちはありがたいが……」


システィナ「いいじゃないですか。せっかくお呼ばれしてるのに。 ね、リーダー。入ってみましょうよ!」


ケネス「う、うん。そうだね……」

ヒューイ
「………」


館の中は、外観からは想像できないほど広い作りになっていた。
外は雨だというのに、天窓から光が差し込む――


道化
「さて、ただ待つだけでは面白くないでしょう。……どうでしょう、口調や役割を変更してみては?」


オクト「口調や役割……? どういうことだ?」


ギギ「君たちにも喋り方とか性格、それからパーティ内での役割なんてのがあるだろう?
    それを改めて決めてみるってことさ」

オクト
「うわっ、なんだこれ?」


突如道化師の右手にある人形がしゃべり出した。


道化
「ああ、紹介が遅れましたね。彼はギギくん。とってももの知りなんですよ」

ヒューイ
「ふ、ふーん。(じゃあ、左手の羊もしゃべるんだろうか…?) ……それじゃ、ちょっとやってみるかな」


ヒューイは、テーブルの上に置かれた、ポーンの駒にそっと手を触れた。


個性



ルーシー「個性……。《口調》、《性格》、《基本職》、《専門職》、《種族》、ですか。」

ヒューイ
「ルーシーはそのまんま『丁寧口調』だよな」

システィナ
「私もですよぅ」

ヒューイ
「システィナは微妙だな……。微妙と言えばケネスもだけど……」

オクト
「まあ、こいつは気が小さいだけで、口調は『男性口調』だな」

ケネス


オクト
「おっさんも『男性口調』か……」

ヒューイ
「男は『男性口調』、女は『丁寧口調』か。偏ってんな」

システィナ
「性格……。『間延び』『高飛車』『強気』『穏やか』『おしゃべり』『無口』ですね」

ヒューイ
「ベルクガルドが『無口』なだけだな。偏ったパーティだ」


ベルク「…………」

ヒューイ
「あとは職業か。《基本職》はベルクガルドが『戦士』、システィナが『魔術師』
 ルーシーが『聖職者』、オクトが『盗賊』だな」

ルーシー
「私は『聖職者』であり『戦士』ですが……」

ギギ
「ああ、称号は左から判定されるから、付けるのは本当に戦士と判定して欲しい人だけにしといた方がいいよ」

ルーシー
「……? そうですか……」

ヒューイ
「そして、俺が《専門職》の『精霊使い』と『レンジャー』、ケネスが『吟遊詩人』だな」

オクト
「ケネスが《専門職》かよ。なんか納得いかねーなー」

ベルク
「……職業に貴賎無しだ。《専門職》だからといって上位なわけではない」

オクト
「そんなもんかね」

役割


システィナ
「こっちの金のナイトはなんなんですか!?」

道化
「ああ、そんな乱暴に……」


システィナはナイトの駒にふれた。


ヒューイ
「こっちはその名の通り役割みたいだな。《リーダー》、《先鋒》、《会計》、《参謀》、《マスコット》
 《サブ》、《調査》、《解錠》か」

オクト
「《リーダー》は……ケネスだな」

ケネス
「(どうして間があるんだよ)」

ヒューイ
「やれやれ。こればっかりは変えられないからな」

ルーシー
「《先鋒》……先鋒はやっぱりベルクさんですか?」

ベルク
「いや、これは戦闘での先鋒ではなく“パーティで真っ先に行動に走る人”を表すものらしい」

ルーシー
「…………」

オクト
「…………」


ヒューイ「いない、な」

ベルク
「……(このパーティは大丈夫だろうか?)」

オクト
「さ、気を取り直して《会計》だな。これは俺だ。みんなもうちょっと感謝して欲しいもんだ」

ヒューイ
「金の計算は酒飲みに任せておくに限る。自制するだろ。
 俺は《参謀》……なんだよなぁ。どういうわけか。《魔術師》がしっかりして欲しいぜ」

システィナ
「……?」

ルーシー
「《マスコット》は……」


……………………



ケネス「な、何でみんなこっちを見るの?」

システィナ
「あ、《リーダー》との兼用は出来ないみたいですよ」

オクト
「じゃあ無しだ無し。つまんねぇな」

ケネス
「…………」

ヒューイ
「《サブ》はリーダーの相談役、合いの手役か……」

ルーシー
「……これも居ませんね」

ケネス
「……しくしく」

オクト
「で、《調査》と《解錠》は俺か。んー、こうして見るとそこそこバランスが取れてるんじゃないか?」

ヒューイ
「戦力的にはな。性格的に偏りすぎてる気がするが……」


その時、天窓から空を見上げていた道化が、何かに気付いたように声をかけた。


道化
「皆様、どうやら雨が止んだ模様です」

オクト
「……本当だ。まあ、かなりしゃべってたからな」

ヒューイ
「そうか? ものの2,3分くらいじゃなかったか?」

道化
「(さえぎって)さあ、また降り始めるとやっかいです。荷物をお運びしましょう」

ケネス
「……すみません。お世話になりました」

道化
「いえいえ。どうぞ道中お気を付けて」


冒険者達が外に出ると、空は最初から雨など無かったかのように晴れ渡り、
そして館も、まるで最初から無かったかのように――




ギギ「……ねえ」


道化「……何ですか?」


ギギ「人間って、面白いね」



作者後記
いきなりユーティリティシナリオで始めてみるという変則スタートでしたが、紹介の続きということでご勘弁いただければと思います。シナリオには、一度に多くの設定が行えることと、楽しいキャラクターがいることで、SARUO様の「道化の館」を使わせていただきました。
自分でも一回書いてみてパーティのことがだいたい分かってきました。変則派ネクラのオクトとヒューイの掛け合いでシナリオが進んでいく感じですね(笑)。リーダーの影が薄い薄い。
あとは地の文がダサいのはしょうがないとして、シナリオのカットのしどころを考えなきゃいけませんね。
さて、こんなスタートを切ったネクラ一行ですが、可愛がっていただければと思います。よろしくお願いしますね。

著作権表記
シナリオ…「道化の館」(SARUO様)
画像…道化(葛葉ふみ様)、ギギ(砂雲堂様)


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